半導体エンジニアとは?仕事内容や向いている人の特徴も詳しく解説

半導体は私たちの生活に欠かせない技術として、スマートフォンやパソコン、自動車、家電製品など、あらゆる電子機器の中核を担っています。そんな半導体の設計・開発・製造を手がけるのが半導体エンジニアです。
近年、AI技術の発展やIoTの普及、電気自動車の台頭により、半導体業界は急速な成長を続けており、半導体エンジニ アの需要も高まっています。しかし、その一方で「技術的に難しそう」「激務なのでは?」といったイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、半導体エンジニアの具体的な仕事内容から、この職業ならではの厳しさ、そして多くのエンジニアが感じているやりがいまで、リアルな実態を詳しく解説します。半導体業界への転職を検討している方や、将来のキャリア選択の参考にしたい方は、ぜひ最後までお読みください。
半導体エンジニアの仕事内容
半導体エンジニアは、現代社会の基盤となるICチップなどの半導体に関する設計・開発・製造・評価・品質管理に携わる専門性の高い職業です。その業務は大きく四つの分野に分かれており、まず設計エンジニアは半導体の電子回路設計やレイアウト設計を担当し、製品の機能や性能を決定づける重要な役割を果たします。
プロセスエンジニアは製造工程の最適化や生産技術の改善に取り組み、効率的で安定した生産体制の構築を目指します。評価エンジニアは完成した半導体の品質チェックや性能評価を行い、製品が設計通りの仕様を満たしているかを検証します。
そして製造装置エンジニアは、半導体製造に必要な精密機器の保守・管理や性能改良を担います。これらの専門分野が連携することで、スマートフォンから自動車まで、あらゆる電子機器の心臓部となる半導体が生み出されており、現代のデジタル社会を支える極めて重要な仕事といえます。
関連記事:半導体エンジニアの仕事内容は?年収や将来性 、有利なスキルを解説
半導体エンジニアはきつい?
半導体エンジニアの仕事は、非常にやりがいがある一方で、厳しい側面も多く存在します。その「きつい」は、主に以下のような点に集約されます。
- 人手不足のため一人あたりの業務量が多くなりがち
- 労働時間が長い・休日出勤がある
- 立ち仕事が多く体に負担がかかる
- 衛生面のルールが厳しくおしゃれを楽しめない
人手不足のため一人あたりの業務量が多くなりがち
半導体業界では深刻な人手不足が続いており、これが個々のエンジニアの負担増加につながっています。その背景には、AI技術の急速な発展や5G通信、電気自動車の普及により半導体需要が爆発的に増加している一方で、半導体エンジニアの育成には長期間を要することがあります。
特に設計や製造プロセスには高度な専門知識が必要で、一人前になるまで数年かかるため、即戦力となる人材が慢性的に不足しています。
その結果、既存のエンジニアが複数のプロジェクトを同時に担当したり、本来であれば複数人で分担すべき業務を一人で抱え込んだりせざるを得ない状況が生まれています。
労働時間が長い・休日出勤がある
半導体製造は24時間365日稼働するクリーンルームでの連続生産が基本であり、製造装置のトラブルや製品の不良が発生した際は、損失を最小限に抑えるため迅速な対応が求められます。
また、新製品の開発では厳しい納期が設定されることが多く、設計変更や評価作業のやり直しが発生すると、どうしても残業や休日出勤で対応せざるを得ません。特に製造装置エンジニアは、装置の定期メンテナンスや突発的な故障対応のため、深夜や休日に呼び出されることも珍しくありません。
さらに、海外顧客との打ち合わせや国際的なプロジェクトでは時差の関係で早朝や深夜の会議参加も必要となります。
立ち仕事が多く体に負担がかかる
半導体の製造現場であるクリーンルームでは、わずかなホコリや振動も製品品質に影響するため、作業台の高さが固定されており、基本的に立ったままでの作業となります。製造装置のメンテナンスや製品の検査作業では、数時間にわたって同じ姿勢を維持する必要があり、腰や足への負担が蓄積されます。
また、精密な作業が求められるため、顕微鏡を覗き込んだり細かい部品を扱ったりする際は、前かがみの姿勢を長時間続けることになり、首や肩のこりに悩まされるエンジニアも少なくありません。特に製造装置エンジニアは、大型装置の上部や内部での作業もあるため、不自然な姿勢での作業を強いられることもあります。
衛生面のルールが厳しくおしゃれを楽しめない
クリーンルームでの作業では、製品への汚染を防ぐため極めて厳格な衛生管理が求められます。入室前には専用のクリーンスーツに着替え、帽子やマスク、手袋の着用が義務付けられているため、髪型や化粧は完全に隠れてしまいます。
また、アクセサリー類は一切着用できず、ネイルアートや香水の使用も禁止されています。男性の場合も髭は剃る必要があり、整髪料の使用も制限されます。
さらに、クリーンルーム用の靴や衣服は機能性重視で統一されているため、個性を表現する余地がほとんどありません。これらの制約により、ファッションやおしゃれを楽しみたいと考える人にとっては、職場での自己表現が難しい環境となっています。
関連記事:半導体エンジニアがやめとけと言われる3つの理由!年収や将来性についても解説
半導体エンジニアのやりがい
半導体エンジニアの仕事は厳しい側面も多いですが、それを上回るほどの大きな「やりがい」も数多く存在します。その主な点は以下の通りです。
- 年収が高い
- 最先端の技術に関われる
- 社会貢献度が高い
年収が高い
半導体エンジニアは高い専門性が求められる職種であり、それに見合った高い年収を期待できます。厚生労働省の職業情報提供サイトによると、半導体技術者の平均年収は775.2万円となっており、これは日本の平均年収約460万円を大きく上回る水準です。
この高収入の背景には、半導体技術の習得に長期間を要することや、グローバル競争が激しい業界において高度な技術力を持つ人材が重宝されることがあります。
また、半導体業界は成長産業であり、AI、5G、電気自動車などの新技術の普及により需要が拡大し続けているため、企業も優秀な人材を確保するために競争力のある給与水準を設定しています。さらに、経験を積んでスペシャリストやマネージャーになれば、年収1000万円を超えることも珍しくありません。
参照:厚生労働省「jobtag」半導体技術者
参照:国税庁
最先端の技術に関われる
半導体エンジニアは、常に技術革新の最前線で働くことができる魅力的な職業です。現在注目されているAI技術の発展には高性能なGPUやAI専用チップが不可欠であり、これらの設計・開発に直接関わることができます。
また、自動運転技術や5G通信、量子コンピューティングといった次世代技術も、すべて半導体技術の進歩に依存しています。半導体の微細化技術では、現在3ナノメートルプロセスの製造技術が実用化されており、将来的には1ナノメートル以下の技術開発も進められています。
このような世界最先端の技術開発に携わることで、人類の未来を切り開く仕事に参加している実感を得ることができ、技術者としての知的好奇心と成長欲求を満たすことができます。
社会貢献度が高い
半導体エンジニアの仕事は、現代社会の基盤を支える極めて社会貢献度の高い職業です。スマートフォンやパソコンから始まり、医療機器、交通システム、エネルギー管理システムまで、私たちの生活のあらゆる場面で半導体が活用されています。
特に医療分野では、CTスキャンやMRI装置、人工心臓ペースメーカーなどに半導体技術が使われており、直接的に人命を救う技術の開発に貢献できます。また、環境問題の解決においても、電気自動車の普及や太陽光発電システムの効率化、スマートグリッドの実現など、持続可能な社会の構築に不可欠な技術を提供しています。
さらに、災害対策システムや防犯システムなど、社会の安全・安心を守る技術の根幹も半導体が担っており、自分の仕事が多くの人々の生活向上や社会課題の解決に直結していることを実感できます。
半導体エンジニアに向いている人
半導体エンジニアに向いている人は、まず細かな作業に集中できる人です。半導体の設計や製造では、ナノメートル単位の精密さが求められるため、わずかなミスも製品の品質に大きく影響します。そのため、長時間の集中を維持し、丁寧で正確な作業を継続できる忍耐力と責任感を持つ人が適しています。
また、論理的思考力と問題解決能力も不可欠で、複雑な回路設計や製造工程でのトラブル発生時には、原因を体系的に分析し、効率的な解決策を見つける能力が重要です。さらに、技術の進歩が極めて速い業界であるため、新しい知識や技術を積極的に学び続ける向学心と探究心を持つ人が成功しやすいでしょう。
コミュニケーション能力も大切で、設計から製造まで多部門との連携が必要なため、自分の専門知識を他者に分かりやすく説明し、チーム全体で協力して目標達成を目指せる協調性を備えた人が向いています。
半導体エンジニアに関するよくある質問
ここからは、半導体エンジニアについてよくある質問に回答していきます。
半導体エンジニアの将来性は?
半導体エンジニアは極めて将来性の高い職業として注目されています。AI技術の発展、5G通信の普及、電気自動車の台頭、IoTデバイスの拡大など、現代社会のデジタル化が加速する中で、これらすべての技術の根幹を支える半導体の需要は爆発的に増加しています。この市場拡大に伴い、半導体エンジニアの求人数も急激に増加しており、企業は優秀な人材の確保に積極的に取り組んでいます。
特に注目すべきは、従来であれば経験者のみが対象とされていた求人において、未経験者でも研修制度を充実させることで積極的に採用する企業が増えていることです。人材不足が深刻化する中で、企業は長期的な人材育成に投資する姿勢を見せており、未経験からでもキャリアを築きやすい環境が整っています。
また、人材獲得競争の激化により、給与水準や福利厚生などの待遇面も大幅に改善されており、他業界からの転職を検討する人にとっても魅力的な選択肢となっています。今後もこの傾向は続くと予想され、半導体エンジニアは安定性と成長性を兼ね備えた職業といえるでしょう。
未経験から半導体エンジニアになるにはどうしたらいい?
未経験から半導体エンジニアを目指す場合、まずは電子工学や物理学の基礎知識を独学で身につけることから始めましょう。書籍やオンライン講座を活用して、半導体の動作原理や電子回路の基本的な仕組みを理解することが重要です。
基礎知識を習得したら、「未経験歓迎」や「研修制度充実」と記載された求人に積極的に応募することが効果的です。現在の半導体業界は深刻な人材不足に直面しているため、多くの企業が未経験者向けの充実した研修プログラムを用意しており、入社後のOJTを通じて実務経験を積むことができます。
特に注目すべきは、従来であれば理系出身者が前提とされていた業界において、最近では文系出身者でも受け入れる企業が増加していることです。企業側も長期的な人材育成に投資する姿勢を強めており、やる気と学習意欲があれば、学歴や専攻分野に関係なくキャリアをスタートできる環境が整っています。転職エージェントや企業の採用担当者と積極的にコミュニケーションを取り、自分の学習意欲をアピールすることが成功への近道となるでしょう。
関連記事:未経験から半導体エンジニアになるには?年収や業界の将来性、おすすめの資格を解説
半導体エンジニアになるために資格は必要?
半導体エンジニアになるために必須の資格は特にありませんが、関連資格を取得することでキャリアアップや転職活動において大きなアドバンテージを得ることができます。実務では実際の技術力や経験が最も重視されるものの、資格は自身の専門知識を客観的に証明する手段として非常に有効です。
特におすすめの資格として、まず電気主任技術者(電験)があります。電気設備の管理・保守に関する国家資格で、半導体製造装置の電気系統を理解する上で役立ちます。また、技術士(電気電子部門)は高度な技術力を証明する最高峰の国家資格として、管理職への昇進や独立時に威力を発揮します。ITパスポートや基本情報技術者試験は、現代の半導体開発で重要なソフトウェア知識を証明でき、特に設計エンジニアを目指す方には有益です。
さらに、半導体製品取扱士やクリーンルーム作業環境測定士といった業界特化型の資格も存在し、専門性をアピールする際に効果的です。これらの資格取得は昇進や転職時の評価向上だけでなく、体系的な知識習得にもつながるため、積極的な取得をおすすめします。
関連記事:半導体エンジニアにおすすめの資格10選!取得のメリット・必要なスキルも解説
まとめ
半導体エンジニアは、高い専門性と将来性を兼ね備えた魅力的な職業です。AI技術の発展や電気自動車の普及により需要は拡大し続けており、未経験からでもチャレンジできる環境が整っています。技術革新の最前線で社会に貢献できるこの分野で、あなたも新しいキャリアを築いてみませんか。
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