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チタンの特徴とメリット・デメリット|チタン加工に生かせる資格も紹介!

目次

さまざまな分野で活用されているチタンは、アルミニウムやステンレスと同じく私たちの生活に欠かせない素材です。この記事では、チタンの特徴をはじめ、素材として使うときのメリット・デメリットについて解説します。また、チタン加工に生かせる資格も紹介するため、チタンにまつわる仕事をしてみたいと考える方もぜひ最後まで読んでみてください。



チタンとは?


チタンとは、銀灰色をした金属元素のことで、元素記号は「Ti」で表されます。最初の発見は1790年、場所はイギリスでした。その後1910年に金属チタンが誕生し、本格的に実用化され始めたのは1946年となります。金属としての歴史が浅いといわれるアルミニウムでさえ実用化されたのが1887年です。チタンが利用されている分野は多岐にわたりますが、実用化してから日の浅い比較的新しい金属といえます。


チタンの種類は二つ

チタンは「純チタン」と「チタン合金」の2種類に分けられます。純チタンは、その名の通り純度が高いチタンです。一方で、チタン合金は、用途に応じて別の元素を混合したものを指します。ここでは、それぞれの性質や用途を解説します。


純チタン

純チタンは純度の高いチタンですが、わずかに鉄や酸素などの元素も含まれます。純チタンは、主に工業用金属として利用され、比較的加工がしやすく価格が安いのが特徴です。


また、純チタンは、JIS規格により4種に分類されています。純度は高いが強度が低い「チタン1種」、汎用性の高い「チタン2種」、強度が高く利用しづらい「チタン3種」、純度の低い「チタン4種」の4つです。


チタン合金

チタン合金は、チタンの性質を向上させることを目的として別の素材を混ぜ合わせて製作したチタンのことです。この記事ではチタン合金と表記していますが、チタニウム合金と呼ばれることもあります。チタン合金は純チタンよりも強度や耐食性などが高いため、価格が高く加工も難しいのが特徴です。


また、チタン合金も性質により三つに分けられます。加工はしにくいが幅広い温度に対応できる「α型合金」、チタン合金の中で最高強度を誇る「β型合金」、αとβ両方の特性を併せ持つ「α+β型合金」です。


埋蔵量が豊富

世界全体のチタンの埋蔵量は、地殻上部を構成する元素の中で10番目に高い比率を誇っています。金属に限定するとアルミニウム、鉄、マグネシウム、チタンの順で多いです。埋蔵量は豊富ですが、鉱石から利用できる状態にするのが難しく、レアメタル(希少金属)に分類されます。


チタンの特徴とメリット


チタンの特徴として知られているのが「軽い・強い・さびにくい」ですが、この三つ以外にも注目したい点が存在します。

ここでは、チタンを素材として利用する際のメリットについてお伝えします。


【チタンの特徴とメリット】

  •   軽い
  •   強度が高い(硬いわけではない)
  •   さびにくい
  •   人にも優しい
  •   添加すれば可能性は無限


軽い

チタンの特徴として、強靭(きょうじん)な金属でありながら比較的軽いという点が挙げられます。以下は代表的な金属の比重です。


純チタン
4.51
チタン合金
4.43
ステンレス
7.6~8.1
アルミ
2.7
マグネシウム
1.4
8.96


チタンを鉄や銅と同じ条件で比べた場合は鉄の重量の6割程度、銅にいたっては半分程度の重さです。


チタンの特性である「軽さ」を生かした主な用途

軽量であるチタンは、さまざまな分野や製品に利用されているほか、生活の中で利用する道具の中でも多く使われています。軽さを生かした製品としては、自動車関連の部品、ゴルフクラブやラケットなどのスポーツ用品、剣道の面が挙げられます。


強度が高い

チタンは、他の金属と比べて強度が高いことも特徴です。金属ごとの比強度は、以下の通りです。


名称

比強度 単位:kN·m/kg

純チタン
72.73

チタン合金(60種、6Al-4V)

221.22

純鉄(99.96%)

24.81

純鉄(99.96%)

20.37

ステンレス鋼(SUS304)

65


上記によると、チタンはアルミニウムの3倍、鉄の2倍強度が高いことが分かります。また、ステンレス鋼よりも強い金属であり、チタン合金になると超々ジュラルミン(アルミ合金)より高い比強度を持ちます。とはいえ、金属には強度の他に「硬度」という指標がありますが、チタンの数値はそれ程高くありません。


ばね特性が高くしなりやすい

チタンにはしなりやすさもあるほか、元に戻る力は鉄の2倍もあります。金属はしなりやすいほど衝撃をある程度吸収できるため、割れるや折れるといった現象を回避することが可能です。もしばね特性が低く硬度が高い金属である場合は、許容以上の衝撃を受け流せずに構造が破壊される可能性があります。


耐熱性も高い

チタンの融点は1666℃前後であり、鉄の融点1536℃よりもやや高い程度です。ただし、チタンは880℃以上で結晶構造が変化しより強靭になるため、物質が溶け出す温度はさほど変わらなくても、耐久性が強化される点で耐熱性が高いといえます。また、チタンは高い温度に耐えるだけでなく、低温状態においても壊れやすくなることがありません。幅広い温度下で利用できるのも、強度が高いと判断される一因です。


チタンの特性である「強度の高さ」を生かした主な用途

チタンの特性である「強度の高さ」を生かした使用用途としては、航空機の部品が挙げられます。ジェットエンジンやランディングギア、各種ボルトやナットなどはチタンで作られています。また宇宙ロケットにもチタンが用いられ、ロケット部分の燃料タンクや、各種構造体の素材として活躍しています。


これらの実績によりチタンの性質は評価され、1970年代からは建材に適用される事例も増えてきています。


さびにくい

「軽い」「強い」とともに、チタンの三大特性として挙げられるのが「さびにくさ」です。チタンの表面には「不動態被膜」と呼ばれる酸化被膜が形成され、腐食やさびを防いでくれます。それゆえに、チタンの耐食性は工業用金属の中ではトップクラスであるとともに、塩化物に強い点から海水に対しての耐食性も相当なものです。


チタンの特性である「さびにくさ」を生かした主な用途

塩化物に強いという観点から海洋建造物や海洋土木の素材として利用されます。また、さびる可能性が高い船舶部品の素材としてもチタンが使われることが多いです。例えば海水淡水化装置や海上橋脚、密閉用ハンドルなどが挙げられます。


人にも優しい

三大特性以外にもチタンを使うメリットは存在します。それが「金属アレルギーが起こりにくい」ことです。金属アレルギーは、汗に触れることで金属がイオン化し体内に吸収されるため発生しますが、前述した通り、チタンには不働態被膜が形成されているため、このイオン化傾向も防いでくれます。それゆえに、チタンでできた製品は人に対して優しく安全性が高いことから、安心して利用できます。


チタンの特性である「生体親和性」を生かした主な用途

チタンは、金属アレルギーが起こりにくい点から身に着けるものや日用品の素材に利用されています。例えば眼鏡のフレームや腕時計、ネックレスやピアスなどの装飾品、フライパンや包丁などの調理用品などが挙げられます。また、人工骨、ペースメーカー、手術用器具、車いすなどの医療用品にも利用されています。


加えて、金やコバルトクロム合金が素材として主流だった歯科医療のインプラントにも、1965年ごろから素材としてチタンが採用されています。


添加すれば可能性は無限

前述した通り、チタン合金は、アルミニウムやニッケルなど別の素材を混ぜ合わせて作る金属です。別の素材を混ぜ合わせることでチタンが元から持っている性質を向上させ、短所と思われる部分も改善します。


特に実用化されているチタン合金は、アルミニウムやバナジウムなどを添加して強度を維持しつつ、加工性を向上させたものが多いです。添加する素材により強度・耐食性・切削性・冷間加工性などが向上するチタン合金は、先進材料として注目されています


チタン合金は、製作コストの高さから流通量が少ないですが、今後成型技術の進歩により利用できる分野が広がるでしょう。省エネルギー化や環境対策が叫ばれる中で、チタン合金は期待されている金属の一つなのです。


チタンのデメリット


利用価値が高いチタンですが、強度が高いがゆえに加工しにくいというデメリットも存在します。チタンは難削材に分類されており、加工するには特性に合った機器と高い技術が必要となります。チタン加工時の問題点は、以下の通りです。


【チタン加工時の問題点】

  •   工具や機械の寿命が短くなる
  •   加工精度や面粗度が悪くなりやすい
  •   切り粉が火災発生の原因となる


ここでは、チタン加工に使われる一般的な方法と、それぞれの加工方法における問題点も解説します。


切断加工での問題点

チタンの切断には、レーザー加工が方法として用いられます。チタンは強度のある金属であるため、レーザー照射による熱で融解させなければなりません


ワイヤーカット加工でもチタンの切断は可能ですが、熱伝導率の低いチタンに対して刃先がある機器を使うと熱が籠るため、機械の寿命にも大きな影響を与えてしまいます。そのため、非接触型切断機器の使用が必須です。


溶接加工での問題点

チタンを加工する工程の中で比較的問題が大きいのが、チタンを溶接するときです。チタンは本来、水や酸素と反応しやすい活性金属であり、低温溶接時でも酸素・窒素・水素と容易に反応してしまいます。


酸素・窒素・水素との反応は溶接部の脆化(ぜいか)現象を引き起こすため、避ける必要がある事象です。もろくなったチタンでは十分な性能を発揮できないことから、シールドガスを使った大気との遮断が溶接時の重要ポイントとなります。


溶接後も温度が200℃を切るまでは、大気との完全隔離が必要です。チタン溶接時に使われる方法はTIG溶接が通常であり、材料の厚みによりMIG溶接や電子ビーム溶接も選ばれます。


切削加工での問題点

チタンの切削作業に使われる主な機材は、マシニングセンタや汎用フライス盤です。とはいえ、切削加工も切断加工と同じように、熱が留まることに注意する必要があります。蓄積されていく熱は、本材と工具の両方に影響を与えるものです。また、切削速度が増すほど熱も増大するため、場合によっては切粉が発火する可能性もあります。


チタン加工の仕事に生かせる資格


難削材であるチタンの加工は、技術力が問われる作業です。チタンの需要がなくなる可能性は低いため、加工技術を持った人が重宝されるでしょう。間違いのない加工が実践できないと、必要数を供給できないという事態になりかねません。時間とコストがかかるチタン加工には、確かな技術を持った人材が必要なのです。


チタン溶接技能者について

チタン加工の技術力を証明できる資格として、チタン溶接技能者が挙げられます。チタンに関する知識と、溶接の技術力が一定以上ないと合格できない資格です。


チタン溶接技術者の資格取得には、チタンの一般知識や溶接機の構造などを問われる筆記試験と、外観および曲げ試験が行われる実技試験に合格する必要があります。合格率は70~90%となっていますが、油断せずにしっかりと対策することが大切です。


まとめ


「軽い・強い・さびにくい」の三大特性を持つチタンは、航空宇宙産業をはじめ、さまざまな分野で活躍しています。特に添加する素材によって特性が変わるチタン合金は、将来において期待の高まる金属です。


新たな合金の誕生や技術革新により、加工がしにくいというデメリットも解消される可能性があります。埋蔵量の豊富なチタンは、今後利用される分野が広がっていくことでしょう。









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