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半導体不足はなぜ解消しないの?原因や影響、いつまで続くのか を解説

半導体はスマートフォンや家電製品、自動車などさまざまな製品に組み込まれ、生活になくてはならない存在です。ただし、2020年以降は深刻な不足が問題となり、自動車の納品が滞るなど各産業に影響が生じました。一時期より改善はしているものの、本格回復はこれからです。AI(人工知能)や、IoT(モノのインターネット)の普及により、半導体の有用性がさらに高まるのは間違いありません。
 
本記事では、半導体不足がなぜ発生し、どれほどの影響を与えているのかを解説します。

目次

半導体とは



半導体の定義は大きく分けて2つあります。まず物理的には、銅や鉄など電気を通す導体と、ガラスやゴムなど電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ材料・デバイスを指します。具体的には、シリコンやゲルマニウムなどの素材や、それらを使って製作されたトランジスタや集積回路(IC)などです。
 
一方、機能的な定義は、電気信号を増幅したり、切り替えたり、記憶したりする働きをする材料・デバイスを指します。こうした物理的、機能的な特性を利用することで、電気の流れをコントロールしたり、電気エネルギーを光に変換したりして電子機器を機能させる役割を持つのが半導体です。
 
自動車やスマートフォンなど身の回りの機械に広く組み込まれている半導体は、現代の暮らしに不可欠な存在であり、その性能向上が製品の高機能化につながっています。
 
半導体とは何かについて、さらに詳しく知りたい方は次の記事を参考にしてください。
関連記事:半導体とは?定義や仕組みをわかりやすく解説!3つの役割や日常生活での使用例も紹介


半導体の種類



半導体は大きく「ディスクリート半導体」と「IC(集積回路)」の2種類に分類されます。ディスクリート半導体は、単一の半導体デバイスです。1つずつが単体の電子部品となり、信号の整流、増幅、スイッチングなどで使われます。電気の流れを一方通行にするダイオード、電気信号の増幅などに使うトランジスタ、カメラのレンズから取り入れた光を電気信号に変換するイメージセンサーなどが代表的です。
 
一方、ICは、トランジスタやダイオードといった電子部品を1つの基板上に集積したものです。CPU(中央演算処理装置)やメモリなどに使われ、電子機器の小型化や高性能化に必須となっています。
 
ICには機能面で、論理演算や記憶を行うデジタルIC、増幅やフィルタを担うアナログIC、電力制御を行うパワーICなどに分かれます。このほかICには、1つのチップに数千~数十万のトランジスタを集積したLSI(大規模集積回路)、3D画像の処理に特化した演算処理装置であるGPUなどがあります。
 
半導体の種類については次の記事で詳細に解説しています。
関連記事:半導体の種類について特徴を徹底解説!性質や実生活での活用例も紹介

半導体が不足している原因



半導体不足は、現代社会において深刻な問題です。ここでは半導体が不足している本当の理由について、需要の拡大や供給不足、工場の生産能力に加え、国際情勢にも焦点を当てて解説します。
 

需要が拡大している

近年の半導体不足の原因としては、需要が急拡大したことが挙げられます。具体的には、2020年に世界中に広がった新型コロナウイルス感染症の影響により各国で外出制限が課され、テレワークやオンラインセミナー、リモート授業が一般化したことです。
 
パソコンやタブレット端末など通信機器への需要が高まったほか、巣ごもり需要の増大で大型テレビといった家電やゲーム機など娯楽製品を求める人が増加しました。半導体を搭載する製品の需要が全般的に拡大したのです。
 
さらに、半導体は、IT技術の進歩とともに飛躍的に必要性が増します。AIや電気自動車の進歩、インターネットに接続して利便性を高めたスマート家電の普及などは、半導体需要を大きく伸ばす要因となりました。
 

供給がひっ迫している

半導体不足の原因には、突発的な要因で供給がひっ迫したこともあります。例えば、事故や災害が供給網に影響を与えます。実際に2020年10月には、宮崎県の旭化成グループの工場で、翌2021年3月には茨城県のルネサスエレクトロニクスの工場で火災が発生して半導体供給網に打撃を与え、国内外の製造業にも及びました。
 
国外でも、2021年2月に米国テキサス州で大寒波が発生し、この影響による停電が韓国サムスン電子の現地工場の生産停止につながり、供給不足が悪化しています。ひとたび生産拠点で事故や災害が起きるとグローバルに広がる半導体供給網が寸断される問題が浮き彫りになりました。
 

工場が生産能力不足に陥っている

工場が生産能力不足に陥っていることも、半導体不足の原因です。既存の技術を用いて半導体を製造している一部の古い工場では、製品の利益率が低く、設備が老朽化しているにも関わらず追加の設備投資を行うことが難しいケースもあります。この場合、生産能力を市場の状況に応じて円滑に拡大することが難しくなります。
 
一方で、AIや自動運転など技術の進歩に応じて半導体需要は急激に高まりました。需要に追いつくためには生産能力の増強が不可欠ですが、それには膨大な費用がかかるため、投資に踏み切れず供給不足に直結するリスクがあるのです。
 

アメリカと中国の経済摩擦

半導体不足の背景には、米国と中国の経済・技術をめぐる対立もあります。2022年10月、米国のバイデン政権は先端半導体技術の中国への供給について、過去に例がない厳しい規制措置を講じました。米国企業がAIやスーパーコンピューターに関する先端技術を中国向けに輸出する際、事実上の許可制とする内容です。一部企業の輸出管理にとどまっていた措置を拡大しました。
 
中国が核兵器やミサイルなどの軍事分野に技術を転用するのを防ぐのが狙いです。中国は最先端技術の獲得が困難になった一方、米国は、中国の軍事的な半導体開発を牽制することで、技術覇権の維持を図りました。規制は米国の半導体製造技術を利用している各国企業の対中取引にも影響を及ぼすものです。米中の技術覇権争いが半導体供給網の混乱を招き、半導体不足に拍車をかける要因ともなりました。
 

ウクライナ危機

ウクライナ危機も半導体生産のサプライチェーンに大きな影響を及ぼしています。これは、半導体製造の過程で欠かせない「希ガス(レアガス)」のロシアやウクライナへの依存度が大きいためです。
 
特にウクライナは半導体に回路を描く工程で必要になるネオンについて、世界供給量の7割を占めるとされていました。従来、ロシアでの鉄鋼製造の副産物として出てくるガスを精製していたのですが、ロシアによるウクライナ侵攻により同国間のサプライチェーンは事実上遮断されました。
 
一方のロシアも、半導体の配線や電極の加工などに使われるパラジウムの生産量が世界の4割を占める資源国です。ウクライナ危機が長引けば、半導体の供給がさらに不足する恐れがあります。

半導体不足による影響



半導体不足は自動車から家電製品、インフラ整備に至るまで、幅広い産業に深刻な影響を及ぼします。
 

自動車産業への影響

自動車産業は半導体と切っても切れない関係にあります。エンジン制御からナビゲーションシステム、安全機能に至るまで、多くの自動車部品には半導体が不可欠です。このため、半導体の供給不足により多くの自動車メーカーが生産ラインの停止や、生産量削減を余儀なくされる事態に迫られました。
 
生産遅延は、消費者の納車待ち時間を長引かせる原因となり、新車販売台数の減少に直結します。車種によっては納期まで1年程度要することもあるためです。 
 
半導体不足が深刻化していた2022年の国内新車販売台数(軽自動車含む)は、約420万台(前年比6%減)と1977年以来45年ぶりの低水準でした。近年の若者の自動車離れに加え、半導体不足による納期の遅延などが響いた結果です。
 

家電製品への影響

半導体は現代の家電製品にも欠かせない部品であり、テレビ、洗濯機、冷蔵庫など、さまざまな製品の性能向上に寄与しています。しかし、近年の半導体供給不足は家電製品の生産に打撃を与えました。自動車と同様、生産ラインの停止や遅延を引き起こし、家電製品の市場価格上昇の原因にもなっています。
 
給湯器のような日常生活に密接に関わる製品でも同様です。給湯器自体の入手が困難になるだけでなく、既存製品の修理パーツが不足することで、修理が遅れるケースも発生します。給湯器を扱うリンナイの2022年3月期連結決算では、半導体不足が響き、純利益が前期比14%減の237億円と3期ぶりの減益となりました。翌2023年3月期には回復しましたが、製造業にとって半導体の供給動向は利益に直結する事態なのです。
 

社会インフラへの影響

半導体不足は社会インフラにも影響します。電力系統の安定運用、鉄道や航空機の制御システム、生命を救う医療機器に至るまで、多くが半導体技術に支えられています。
 
例えば、電力系統では、需給管理システムの運用に支障をきたすことで、電力が不安定化し、停電のリスクも生じます。鉄道や航空機においても、運行管理システムや安全装置の機能不全によるサービスの遅延や中断が発生する可能性もあるでしょう。医療機器の場合、診断や治療に使用される機器の生産遅延は、患者の健康に直結します。
 
このように、半導体不足は単に製品の生産遅延や価格上昇という問題に留まらず、社会全体の安定にも影響する問題です。
 

経済への影響

半導体不足は、単に特定の製品群に影響を及ぼすだけでなく、製造業全体に波及し、経済回復の足かせとなります。自動車や家電といった製品の製造だけでなく、部品を供給する業者、最終的な流通や小売業者など幅広い産業に影響を与えます。
 
半導体不足による生産遅延は、在庫不足や欠品という形で消費者に影響し、ニーズに応えられないことで売上機会の損失が生じるでしょう。また、生産コストの上昇分が製品価格に転嫁されることで、消費者の購買意欲を低下させる懸念もあります。結果として経済全体の回復が遅れます。特にAIなど最新技術を多用する製品の需要が高まる現在、その影響はさらに深刻化することが予想されるでしょう。
 

国民生活への影響

半導体不足は国民生活そのものにも影響します。例えば、猛暑時のエアコン不足は、高齢者や小さな子どもがいる家庭にとって、健康上のリスクを高める懸念があります。医療機器の供給問題は、診断や治療の遅延につながり、健康に直接的な悪影響を及ぼすでしょう。
 
娯楽面でも同様です。最新のゲーム機や電子機器の品薄は、特に若者の生活における楽しみやストレス解消の機会を奪います。デジタルデバイスへの依存度が高い現代社会において、生活の質の低下に直結しかねません。半導体不足に乗じ、偽物や粗悪品が代替品として流通することも懸念されます。半導体不足はただの産業問題ではなく、国民の生活基盤を揺るがしかねない問題となるのです。

半導体不足はいつまで続くの?



半導体不足は経済にさまざまな悪影響を及ぼす可能性がありますが、2024年以降は解消に向かう見込みです。台湾の台湾積体電路製造(TSMC)や米国のインテルなど半導体主要メーカーが、大規模な工場建設計画を相次ぎ打ち出しているためです。
 
TSMCは2024年2月、日本初の生産拠点となる熊本工場を稼働させています。同社はドイツや米国でも生産能力を拡大する計画です。インテルもドイツやマレーシアなどでの工場増強計画を公表しています。
 
こうした動きの背景には、米国や欧州など各国が生産力拡充のために積極的な財政支援を進めていることがあります。2024年3月に米政府がインテルに最大85億ドルという異例の規模の補助金支給を発表するなど、各国が技術覇権獲得に向け、国内に半導体工場を誘致しようと支援合戦を展開しているのです。
 
半導体市況に対する強気な見方が増えています。半導体国際団体SEMIは2023年末、半導体製造装置の売上高は2024年に2年ぶりに回復を果たし、2025年には過去最高を更新する予測だと発表しました。主要メーカーの積極的な設備投資が需要を押し上げる見込みです。2024年以降は半導体不足が徐々に緩和に向かうとの見方が有力であり、サプライチェーンの正常化が期待できるでしょう。

「2024年問題」が懸念される半導体市場は今後どうなる?



半導体不足は2024年以降に解消されていく見込みですが、その一方で半導体業界では「2024年問題」も心配されています。それは、近年の半導体不足が一気に解消されて逆に供給過剰になっていく懸念です。
 
2020年以降の世界的な半導体不足により、欧米や日本など主要国は、産業の空洞化を防ぐ狙いから、国内外で大規模な半導体工場の新設を進めてきました。工場建設から本格稼働までには数年を要するため、2024年以降に世界の生産力が一気に強化されることで、需要を大きく超えるリスクがあるのです。製品価格の低下や半導体メーカーの業績悪化も懸念されます。
 
ただし、AIやIoT、自動運転などの技術の進展により新たな需要が生まれる可能性が大きいことも事実です。2025年には半導体製造装置市場が過去最大になると予測したSEMIの代表者は、「半導体市場には周期性があります。2024年は回復への転換期となり、2025年は力強い回復を見せるでしょう」と指摘しました。
 
半導体不足は2024年以降に解消されていく見込みですが、その一方で半導体業界では「2024年問題」も心配されています。それは、近年の半導体不足が一気に解消されて逆に供給過剰になっていく懸念です。
 
2020年以降の世界的な半導体不足により、欧米や日本など主要国は、産業の空洞化を防ぐ狙いから、国内外で大規模な半導体工場の新設を進めてきました。工場建設から本格稼働までには数年を要するため、2024年以降に世界の生産力が一気に強化されることで、需要を大きく超えるリスクがあるのです。製品価格の低下や半導体メーカーの業績悪化も懸念されます。
 
ただし、AIやIoT、自動運転などの技術の進展により新たな需要が生まれる可能性が大きいことも事実です。2025年には半導体製造装置市場が過去最大になると予測したSEMIの代表者は、「半導体市場には周期性があります。2024年は回復への転換期となり、2025年は力強い回復を見せるでしょう」と指摘しました。
 
需要と供給がともに増加する良いサイクルが期待されます。技術進歩の状況や国際情勢に注意する必要はありますが、半導体工場の新設や設備増強が本格化してくると、稼働に不可欠な人材獲得競争も強まる可能性があります。

まとめ



半導体不足の状況や今後の見通しなどについて解説してきました。主要メーカーは増産に向けた工場建設など供給力向上を急いでおり、2024年以降、半導体不足は改善する見通しです。需要次第で供給過多に陥る懸念はありますが、技術の進展で半導体を求める動きが強まる可能性は高く、新工場立ち上げ時期などに合わせて半導体関連企業で人材確保が求められるでしょう。
 
ワールドインテックのFC事業部では、半導体などさまざまな分野の製造業の現場に人材を派遣しています。リーダーと現場が一体となり組織的に製造業務を支援する「チーム派遣」と「製造請負」が強みです。人間関係や作業内容による退職リスクを、現場のフォローができるリーダーを置くことで抑止します。製造請負で採用の負担を軽減するワールドインテックのFC事業部をぜひご活用ください。


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