システムエンジニアの給料が安い理由とは?技術職・開発職の給料事情や年収を上げるコツ

システムエンジニア(SE)として働いているものの、「技術力があるのに給料が思うように上がらない」「同世代の他職種と比べて収入が低い気がする」と感じている方は少なくないでしょう。
実際に、日本のIT業界では長時間労働の割に給与水準が他の先進国と比べて低いという課題が指摘されており、特にシステムエンジニアの待遇については多くの議論がなされています。しかし、なぜこのような状況が生まれているのでしょうか?
本記事では、システムエンジニアの給料が安いと言われる構造的な理由を詳しく解説し、技術職・開発職全体の給料事情についても触れながら、あなたの年収アップを実現するための具体的な戦略をご紹介します。現在の収入に満足していない方、キャリアアップを目指している方は、ぜひ最後までお読みください。
システムエンジニアの給料が安い理由6つ
システムエンジニア(SE)の給料が「安い」「割に合わない」と感じられる背景には、主にIT業界特有の構造的な問題と、労働環境、個人のスキル評価に関する問題が絡み合っています。
主な理由を6つにまとめて解説します。
多重下請け構造になっているから
IT業界では、元請け企業から複数の下請け企業へと段階的に仕事が発注される「多重下請け構造」が根深く浸透しています。この構造では、大手SIerやコンサルティング会社が顧客から案件を受注し、それを協力会社や二次請け、三次請けへと順次発注していきます。
問題となるのは、階層が下がるごとに各社が中間マージンを差し引いていることです。例えば、顧客が支払う1,000万円のプロジェクトでも、元請けが20%、一次請けが15%、二次請けが10%のマージンを取ると、実際に開発作業を行う三次請けの会社には550万円しか残りません。この結果、現場で技術的な作業を担当するエンジニアの取り分が大幅に減少し、労働量に見合わない低賃金につながっているのです。
裁量労働制やみなし残業を採用しているから
多くのIT企業では、業務の特性を理由に裁量労働制やみなし残業制度を導入しています。裁量労働制では、実際の労働時間に関係なく一定時間働いたものとみなされ、みなし残業制では月給に一定時間分の残業代があらかじめ含まれています。
これらの制度は本来、効率的な働き方を促進するためのものですが、実態としては長時間労働の温床となりがちです。プロジェクトの納期が迫ると深夜まで働いたり、休日出勤したりしても追加の残業代は支払われません。結果として、「月200時間働いても給料は変わらず、時給換算すると最低賃金以下」という状況に陥るエンジニアも少なくありません。
スキルや経験が不足しているから
システムエンジニアの年収は、保有するスキルと経験によって大きな格差が生まれます。特に、基本的なプログラミングスキルのみで、最新技術への対応や専門性の高い領域での経験が乏しい場合、市場価値が低く評価されてしまいます。
また、上流工程である要件定義や基本設計、プロジェクト管理といった経験が不足していると、いわゆる「コーダー」として位置づけられ、給与水準も低く抑えられがちです。クラウド技術、AI・機械学習、セキュリティといった需要の高い分野でのスキルが不足している場合も同様で、技術的な付加価値を提供できないエンジニアは、どうしても給料が上がりにくい構造になっています。
職種による違いが出やすいから
同じ「システムエンジニア」という肩書きでも、担当する工程や職種によって年収には大きな開きがあります。プロジェクトマネージャーやITコンサルタント、システムアーキテクトといった上流工程を担当する職種は、年収800万円~1,500万円程度の高水準となることが多い一方で、運用・保守業務やテスター、ヘルプデスクといった下流工程の職種では年収300万円~500万円程度に留まることが珍しくありません。
この差が生まれる理由は、上流工程では顧客との直接的なやり取りや戦略的な判断が求められ、より高い責任と専門性が必要とされるためです。一方、下流工程は作業の標準化が進んでおり、比較的経験の浅いエンジニアでも対応可能な業務が多いため、給与水準も低く設定される傾向にあります。
企業規模による違いがあるから
企業規模は、システムエンジニアの給与水準を決定する重要な要因の一つです。従業員1,000名以上の大企業では、新卒でも年収400万円~500万円程度からスタートし、経験を積むにつれて年収700万円~1,000万円以上も期待できます。これに対して、従業員50名以下の中小企業では、新卒年収が300万円前後で、ベテランでも年収600万円程度が上限となることが多いのが現実です。
この差が生まれる背景には、大企業の方が資金力があり、給与体系や福利厚生が整備されていることに加え、大規模で高単価なプロジェクトに参画する機会が多いことが挙げられます。また、大企業では研修制度や キャリアパスも明確で、スキルアップの機会も豊富に用意されているため、長期的な年収向上も期待しやすい環境が整っています。
年功序列制度が残っている場合があるから
IT業界でも、特に老舗のSIerや大企業では、伝統的な年功序列制度が残っている企業が少なくありません。この制度では、個人のスキルや成果よりも勤続年数が重視されるため、どれだけ優秀な技術力を持つ若手エンジニアでも、経験年数が少ないという理由だけで低い給与に抑えられてしまいます。
例えば、入社3年目でチームリーダーとしてプロジェクトを成功に導いたエンジニアがいても、「まだ経験が浅い」という理由で昇進や昇給が見送られることがあります。一方で、技術的な貢献度は低くても勤続年数が長いという理由だけで高い給与を得ている社員が存在することもあり、このようなミスマッチが若手エンジニアのモチベーション低下と離職率増加の要因となっています。
技術職・開発職はとくに年収が低いし割に合わない?
技術職・開発職の年収が他業界と比較して低く、労働条件に見合わないとされる背景には、業務の性質と市場構造に深刻な問題があります。開発職は、システムの企画・設計・プログラミング・テストといった新規システム構築に特化した職種である一方、技術職はより幅広く、開発業務に加えて運用・保守・インフラ構築・ネットワーク管理など、技術的専門知識を活用した課題解決全般を担当します。
しかし、どちらの職種も共通して直面している課題が長時間労働の常態化です。特にプロジェクトの納期が迫ると、下流工程であるコーディングやテスト業務に作業が集中し、深夜残業や休日出勤が頻発します。この労働時間の長さに対して、前述の裁量労働制やみなし残業制により適切な残業代が支払われないケースが多く、時給換算すると他業界の平均を大きく下回ることが珍しくありません。
さらに問題となるのが、技術職の多くが従事する運用・保守業務の単価の低さです。システム開発完了後の運用・保守は、新規開発と比較して創造性や技術的挑戦が少ないとみなされ、市場での評価額も低く設定される傾向にあります。
多重下請け構造の末端に位置する技術者の多くがこうした業務にアサインされるため、高いスキルを持ちながらも年収向上が困難な状況に置かれているのが現実です。
システムエンジニアの平均給料
システムエンジニア(SE)の平均給料(年収)は、日本の平均と比べて高い水準にありますが、職種や経験年数、企業規模、地域などによって大きな幅があります。
システムエンジニア(受託開発) | 574.1万円 |
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システムエンジニア(基盤システム) | 752.6万円 |
システムエンジニア(組込み、IoT) | 574.1万円 |
システムエンジニア(Webサービス開発) | 574.1万円 |
※参考:厚生労働省「jobtag」
厚生労働省のデータによると、受託開発、組込み・IoT、Webサービス開発のシステムエンジニアは574.1万円となっており、基盤システムのシステムエンジニアは752.6万円と約180万円の開きがあります。これは担当する業務の専門性や責任範囲の違いを反映しています。
また日本の平均給与は460万円であることを考慮すると、受託開発やWebサービス開発のシステムエンジニアは平均を上回っている一方、基盤システムのシステムエンジニアは平均を大幅に上回る高水準となっています。しかし、長時間労働が常態化している実情を考慮すると、時給換算では決して高いとは言えません。
さらに、男性の平均給与569万円、女性316万円と比較しても、特に女性のシステムエンジニアにとっては相対的に高い水準にある反面、男性については業界平均とそれほど変わらない水準に留まっているのが現状です。
※参考:国税庁|令和5年分 民間給与実態統計調査
関連記事:システムエンジニアの年収を年代別に解説!収入を上げるためのポイントも紹介
システムエンジニアが年収を上げるコツ
システムエンジニア(SE)が年収を上げるためには、市場価値の高いスキルを身につけ、それを正しく評価してくれる環境に身を置くという戦略的な行動が必要です。
ここでは、年収アップにつながる具体的なコツを5つご紹介します。
スキルを磨き、専門性を高める
年収アップの最も基本的かつ確実な方法は、市場価値の高いスキルを身につけることです。特に需要が高く、供給が不足している技術分野に特化することで、大幅な年収向上が期待できます。
現在市場価値が高いスキルとしては、クラウド技術(AWS、Azure、GCP)、AI・機械学習、データサイエンス、サイバーセキュリティ、DevOps、マイクロサービスアーキテクチャなどが挙げられます。例えば、AWSの上級資格を取得したクラウドエンジニアは年収800万円以上、機械学習エンジニアは年収1,000万円以上も珍しくありません。
また、単一の技術に留まらず、複数の技術を組み合わせた「T字型」の専門性を築くことも重要です。例えば、Pythonでのプログラミングスキルに加えて、データベース設計、インフラ構築、セキュリティ対策まで一貫して対応できるエンジニアは、企業から高く評価され、それに見合った報酬を得ることができます。継続的な学習と資格取得を通じて、常に最新技術にアップデートしていく姿勢が年収向上への近道となります。
上流工程のスキルを習得する
さらに年収を上げるには、顧客折衝やプロジェクト管理といった上流工程のスキルを身につけることが極めて有効です。コーディングなどの下流工程は標準化が進み、相対的に単価が下がりやすい一方、要件定義や基本設計、プロジェクトマネジメントは高い専門性と経験が要求されるため、高い報酬が設定されています。
具体的には、顧客の業務を理解し、IT要求を適切に要件として整理する「要件定義スキル」、プロジェクト全体の進行を管理し、品質・コスト・スケジュールを最適化する「プロジェクトマネジメントスキル」、システム全体のアーキテクチャを設計する「システム設計スキル」などが挙げられます。
これらのスキルを身につけることで、プロジェクトマネージャーやITアーキテクト、ITコンサルタントといった高単価な職種へのキャリアアップが可能になります。PMPやITストラテジストなどの資格取得も、スキルの客観的な証明として有効です。また、業界知識を深めることで、単なる技術者ではなく「業務とITの橋渡し役」として価値を発揮できるようになります。
会社を変える
多重下請け構造に組み込まれていたり、年功序列が根強い企業に所属していたりする場合、個人の努力だけでは年収アップに限界があります。このような構造的な問題がある環境では、どれだけスキルを向上させても、給与体系や昇進制度の制約により適正な評価を受けることが困難です。
転職先としては、自社でサービスを開発・運営している事業会社、外資系IT企業、メガベンチャー、成長企業などが有力な選択肢となります。これらの企業では、多重下請け構造による中間マージンの搾取がなく、成果に応じた評価制度が整備されているケースが多いためです。
転職活動では、単に年収だけでなく、評価制度、キャリアパス、技術環境、業務内容なども総合的に判断することが重要です。特に、自分のスキルと市場価値を正確に把握し、それに見合った条件を提示してくれる企業を選択することで、大幅な年収向上を実現できます。転職エージェントを活用することで、非公開求人へのアクセスや年収交渉のサポートも受けられるため、効果的な転職活動が可能になります。
フリーランスとして独立する
実務経験や専門スキルを十分に身につけた後、フリーランスとして独立することも年収アップの有力な選択肢です。フリーランスエンジニアの単価は、正社員の月給を大きく上回ることが多く、年収1,000万円以上も現実的な目標となります。
フリーランスとして成功するためには、特定分野での深い専門性、安定した案件獲得能力、自己管理能力が不可欠です。特に、企業が外部委託したい高度な技術案件や、短期集中で成果を求められるプロジェクトに対応できるスキルレベルに達していることが前提となります。
また、フリーランス向けのエージェントサービスを活用することで、高単価案件への参画機会を得やすくなります。ただし、フリーランスには収入の不安定さや社会保障の薄さといったリスクも存在するため、十分な準備期間を設け、リスク管理を行った上で独立を検討することが重要です。副業から始めて実績を積み、安定した案件基盤を構築してから本格的に独立するというステップを踏むことで、リスクを最小化しながら年収向上を実現できます。
コミュニケーション能力を磨く
技術力だけでなく、コミュニケーション能力も年収に直結する重要なスキルです。特に上流工程やマネジメント職では、技術的な専門知識を非技術者にもわかりやすく説明する能力や、多様なステークホルダーとの調整能力が強く求められます。
具体的には、顧客や経営陣に対してIT投資の価値や必要性を説得力を持って説明する「プレゼンテーション能力」、プロジェクトチーム内での意見調整や合意形成を図る「ファシリテーション能力」、問題発生時に関係者間で円滑に情報共有を行う「報告・連絡・相談スキル」などが挙げられます。
また、英語力も年収向上に大きく寄与するスキルです。外資系企業や海外展開を行っている日系企業では、英語でのコミュニケーション能力が評価され、それに応じた高い報酬が設定されることが多いためです。グローバルなプロジェクトに参画することで、さらなるスキルアップと年収向上の機会を得ることができます。これらのソフトスキルは、技術力と組み合わせることで相乗効果を発揮し、市場価値を大幅に高める要因となります。
まとめ
システムエンジニアの給料が安いと感じる背景には、多重下請け構造や裁量労働制、スキル不足、企業規模の違いなど複合的な要因があります。しかし、市場価値の高いスキル習得、上流工程への挑戦、適切な環境への転職、フリーランス独立、コミュニケーション能力の向上といった戦略的なアプローチにより、年収アップは十分に実現可能です。
重要なのは、現在の環境に甘んじることなく、常に市場のニーズを把握し、自身の価値を高め続けることです。技術の進歩が激しいIT業界において、継続的な学習と成長こそが、理想的なキャリアと収入を手に入れる鍵となります。
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