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パワー半導体の世界シェアランキング!日本企業の強みや将来性も解説

電気自動車(EV)の普及、再生可能エネルギーの導入拡大、そしてデジタル社会の進展により、電力を効率的に制御・変換するパワー半導体の重要性が急速に高まっています。スマートフォンから産業機器、電力インフラまで、現代社会のあらゆる場面でパワー半導体が活用されており、その市場規模は年々拡大を続けています。

このパワー半導体市場において、世界各国の企業が激しい競争を繰り広げていますが、日本企業は長年にわたって高い技術力と品質で世界をリードしてきた分野でもあります。しかし近年は、海外企業の台頭や新技術の登場により、競争環境は大きく変化しています。

本記事では、最新のパワー半導体世界シェアランキングを詳しく分析し、日本企業の現在の立ち位置と独自の強みについて解説します。さらに、次世代パワー半導体技術の動向や、日本企業が今後も競争力を維持・向上させるための戦略についてもお伝えします。

目次

パワー半導体とは


パワー半導体とは、大きな電力を効率よく制御・変換するための半導体です。パソコンやスマートフォンなどの演算や記憶を担うロジック半導体と異なり、大電流や高電圧を扱う「電力制御」を主な役割としています。

パワー半導体の主な役割は、電気の変換と制御です。具体的には、以下の4つの働きを通じて電力を効率的に利用できるようにします。

  • コンバータ: 交流 (AC) を直流 (DC) に変換する
  • インバータ: 直流 (DC) を交流 (AC) に変換する
  • レギュレータ: 直流の電圧を変換する
  • 周波数変換: 交流の周波数を変える


これらの働きにより、発電所から送られてくる電気を、家電製品や産業機器が使える形に変換したり、モーターの回転数を精密に制御したりすることが可能になります。高い電力効率で動作するため、省エネルギー化に不可欠な存在です。

パワー半導体について詳しくは下記の記事もご覧ください。

関連記事:パワー半導体とは?用途や他の半導体との違い、世界シェアや将来性について解説

パワー半導体の主な種類


パワー半導体には、電力の制御方法や構造によってさまざまな種類があります。

パワートランジスタ

パワートランジスタは、電力の増幅やスイッチング制御を行うパワー半導体の代表的な種類です。小さな制御信号で大きな電力を制御できる特徴があり、電流の流れをオン・オフで切り替えたり、電流量を調整したりすることができます。

主な種類としては、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、パワーバイポーラトランジスタなどがあります。MOSFETは高速スイッチングが可能で効率が良く、スマートフォンの充電器や小型電源装置に多用されます。

IGBTは高電圧・大電力の制御に適しており、電気自動車のインバータや産業用モーター制御に欠かせない部品です。

ダイオード

ダイオードは、電流を一方向にのみ流す「整流作用」を持つ最もシンプルなパワー半導体です。交流電源を直流に変換する際の基本部品として、あらゆる電子機器に組み込まれています。

パワーダイオードの主な用途は、AC/DC変換器(整流回路)、DC/DC変換器でのフリーホイーリングダイオード、電源保護回路などです。特に重要なのは、スイッチング電源やインバータ回路において、急激な電圧変化から回路を保護する役割です。

近年では、より高効率で高速なSiC(炭化ケイ素)ダイオードやGaN(窒化ガリウム)ダイオードの開発が進んでおり、電力損失の大幅な削減が可能になっています。

サイリスタ

サイリスタは、一度オンになると外部からの制御なしには自動的にオフにならない「ラッチング特性」を持つパワー半導体です。大電力を扱う電力制御において、長い歴史を持つ重要な素子です。

代表的なサイリスタには、SCR(シリコン制御整流器)、トライアック、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)などがあります。SCRは交流電力制御や直流電動機の制御に使われ、トライアックは家庭用調光器や電熱器の温度制御などに利用されています。GTOは大容量の電力変換装置に使用されており、電力系統や鉄道車両のインバータなど、数千ボルト・数千アンペアレベルの超大電力制御を可能にしています。

近年はより制御しやすいIGBTに置き換わる傾向にありますが、超大容量用途では依然として重要な役割を担っています。

パワー半導体の世界シェアを紹介


パワー半導体の世界シェアは下表のようになっています。

企業名

本社国

主な分野・特徴

Infineon Technologies

ドイツ

車載・産業領域が強い

STMicroelectronics

スイス/フランス

車載、産業、再生可能エネルギー

Wolfspeed (Cree)

アメリカ

SiC分野に強み

ローム(ROHM)

日本

パワー半導体・SiC世界上位

ON Semiconductor

アメリカ

自動車・産業向け

三菱電機

日本

産業用パワー半導体

BYD

中国

EV用SiCでシェア拡大

ルネサスエレクトロニクス

日本

車載、産業用パワー半導体

Texas Instruments

アメリカ

アナログ・パワー領域が強い

GeneSiC Semiconductor

アメリカ

SiCデバイス専門


パワー半導体市場では、インフィニオン(ドイツ)を筆頭とする欧米企業が上位シェアを占める一方で、三菱電機、ローム、ルネサスエレクトロニクスといった日本企業も世界トップ10にランクインし、特に産業機器や自動車分野で高い技術力を維持しています。

また、次世代素材であるSiC(炭化ケイ素)への移行が急速に進んでおり、アメリカのWolfspeedや日本のロームがSiC分野で上位シェアを獲得しています。従来のシリコンよりも高効率なSiCは、EV・再生可能エネルギー市場の拡大とともに需要が急増している状況です。

さらに注目すべきは、中国のEVメーカーBYDが自社でSiCデバイスを内製化してシェアを拡大していることで、これはパワー半導体の主要用途がEVへとシフトする中で、最終製品メーカーが半導体分野にも進出する新たなトレンドを示しています。

参考:経済産業省|半導体・デジタル産業戦略

日本企業のパワー半導体のシェア率は?

日本の主要なパワー半導体企業とその世界シェアの目安は下表の通りです。

企業名

世界シェア(目安)

備考・特徴

ローム

約10%

SiC分野で世界上位

三菱電機

約7%

産業・自動車分野に強み

富士電機

約5%

産業用インバータが中心

東芝

約3%

産業・民生両方

ルネサスエレクトロニクス

約2%

車載&産業システム


日本のパワー半導体企業は、それぞれ異なる専門分野で世界市場における重要な地位を確立しています。ロームが約10%のシェアで日本企業の中では最も高く、特にSiC(炭化ケイ素)分野で世界上位の技術力を誇っています。三菱電機は約7%のシェアを持ち、産業機器や自動車分野での大電力制御技術に強みを発揮しています。富士電機は約5%で産業用インバータを得意とし、東芝は約3%で産業・民生の両方に幅広く対応、ルネサスエレクトロニクスは約2%で車載および産業システム分野に特化しています。

これら5社の合計シェアは約27%となり、日本全体として世界市場で相当な存在感を示していることがわかります。しかし単独企業で見ると、Infineon TechnologiesやON Semiconductorなど海外大手企業がトップシェアを占めているのが現状です。

それでも日本企業は、高品質な製品と特定分野での高い技術力により、世界的に重要な役割を担っており、特に次世代技術のSiCや産業用途では競争優位性を保持しています。

パワー半導体の将来性


パワー半導体の将来性は非常に明るく、世界的なトレンドとなっている電気自動車や再生可能エネルギーシステムなどの技術革新を背景に、需要の急激な拡大が予想されています。特に注目すべきは、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の市場が2021年からの10年間で約24倍に成長すると見込まれている点です。この成長は、従来のシリコン半導体を大幅に上回る性能と効率性を持つ次世代材料への転換が加速していることを示しています。

市場拡大の主要な牽引力となっているのは、世界各国が推進する脱炭素政策とデジタル化の進展です。電気自動車の普及により、高効率なパワー半導体への需要が急増しており、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーシステムでも電力変換効率の向上が求められています。

さらに、データセンターやAI処理装置の消費電力増大に伴い、より効率的な電力制御技術への需要も高まっています。技術面では、SiCやGaN(窒化ガリウム)などの新材料が実用化段階に入り、従来比で大幅な省エネ効果を実現できるようになったことも市場成長を後押ししています。

ただし、高額な開発コストや生産設備への投資、熱管理などの技術的課題も残されており、これらの解決が今後の成長の鍵となります。

まとめ


パワー半導体市場は、EV普及や脱炭素社会への転換により急速な成長が見込まれており、SiC素材への技術シフトが新たな競争軸となっています。日本企業は世界市場で約27%の合計シェアを持ち、ローム、三菱電機、富士電機などがそれぞれの得意分野で競争力を維持しています。今後は次世代材料技術の開発と量産体制の確立が、世界シェア拡大の鍵となるでしょう。

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