半導体業界が人材不足なのはなぜ?離職率や人材育成のポイントを解説

「半導体業界が人材不足なのはなぜ?」
「半導体業界ってどのような仕事をするの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
半導体業界の人材不足は、需要増加に人材が追いついていない、スキルを持った人の確保が困難などが原因といわれています。
本記事では、半導体業界で人材が不足している理由 や具体的な仕事内容について解説します。半導体業界への就職をお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
なぜ半導体業界は人材不足?
半導体業界が人材不足に陥っている理由は、以下のとおりです。
- 半導体需要の爆発的な増加
- 人材供給に課題がある
- 他業界との人材獲得競争が激しい
1つずつ解説します。
半導体需要の爆発的な増加
近年、社会全体のデジタル化(DX)が急速に進んでおり、5Gインフラやスマートデバイス、IoT(モノのインターネット)など、半導体を必要とする分野が拡大しています。また脱炭素社会の実現に向けて、エネルギー分野(EVや再エネ制御など)でも半導体の重要性が高まっている点も特徴です。
従来半導体製造は海外に依存していましたが、需要増加を受け、日本の国家戦略として「半導体の国内回帰」が掲げられました。最近は政府主導で、国内生産拠点の強化や研究開発投資が進められています。
その結果、これまでにないレベルで半導体業界は人材が求められるようになりました。
しかし労働人口の減少などを原因に、需要に対して供給が追いついていないため、人手不足に陥っています。
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人材供給に課題がある
スマートデバイスやIoTなどの普及により半導体の需要が急増している一方、製造する人材の供給が追いついていません。専門知識や技術を持つ人材が不足しており、特に設計・製造・開発分野で即戦力として働ける人材の確保に悩んでいます。
人材不足の理由として、労働環境や仕事の大変さなども挙げられます。
半導体の製造工場は、一般的に24時間稼働です。夜勤や交替制勤務で働き続けると、生活リズムの乱れや心身の負担につながりやすく、特に若手や女性から避けられる傾向にあります。
また半導体は精密機器のため、慎重に作業しなければなりません。ミスが許されない精神的なプレッシャーも、人材不足につながっていると考えられます。
さらに半導体技術の進歩は非常に速く、対応するためには常に新しい知識や技術を学び続ける姿勢が必要です。しかし仕事をしながらの勉強は容易ではなく、過酷な労働環境によって就職を避けられている可能性もあります。
他業界との人材獲得競争が激しい
半導体業界が求める「電気・電子、機械、化学、情報」などの専門知識を持つ人材は、他業界からも需要が高いです。
特にIT業界や自動車業界、コンサルティング業界などの成長産業では、デジタル化・AI・IoTの進展に伴い、技術力や論理的思考力を持つ人材の争奪戦が激化しています。
例えばIT業界では、ソフトウェア開発やAIなど、幅広い分野で電気電子や情報工学の知識がある人材が求められています。
自動車業界では、EV(電気自動車)や自動運転技術の開発など、半導体の力が必要な領域が拡大しており、高いスキルを持つ人材の獲得競争が熾烈です。
コンサルティング業界は、企業課題の分析や戦略立案に論理的思考力が強く求められており、理系出身者を中心に高いニーズがあります。
半導体業界が求める人材は他業界も必要としているため、人材確保に苦労しているのです。
半導体人材とは
半導体人材とは、半導体の研究開発、設計、製造、販売など、半導体に関わる人々の総称です。
具体的な職種について、仕事内容や魅力を解説します。
設計・開発
半導体の設計・開発業務は、半導体チップの仕様や機能、回路を考案し、設計図に落とし込む仕事です。
まずは顧客が求める仕様や機能を把握し、実現するための処理方法や回路構成を考えます。設計段階では、コンピューターでの精密なシミュレーションや回路設計ツールを用いて、効率的な回路パターンを設計します。
設計完了後は、実際に試作を行い、仕様通りに動くかなどを確認するのが大切です。
設計・開発は半導体業界の中でも特に専門性が高く、製品の品質や性能を左右する重要な役割を担っています。
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製造・生産技術
半導体の製造・生産技術は、設計された半導体チップを実際に工場で生産し、安定して量産することが目的です。
製造工程は大きく「前工程」と「後工程」に分かれており、それぞれに高度な技術と専門知識が求められます。
前工程では、シリコンウエハー上に微細な回路パターンを形成し、配線を精密に作り込んでいきます。同時にフォトマスクを使ったリソグラフィ技術やエッチングなど、非常に複雑で厳密な工程を連続して行うため、ミスは許されません。
後工程では、ウエハー上に作られた半導体チップを個々に切り出して、パッケージに封入します。万が一不良品を見落としてしまうとそのまま市場に出回ってしまうため、徹底した管理が必要です。
製造・生産技術の現場では、生産効率の向上や品質維持のために、AIやIoT、ロボットなどの自動化技術を導入しているところもあります。しかし最終的には手作業で確認するのが大切です。
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研究開発
研究開発は、現在製造している製品だけでなく、次世代の半導体を生み出すための基礎研究や技術開発が仕事です。例えば省エネ関連、新材料やプロセス技術の開発など、未来の社会や産業を支える革新的な技術の創出が求められています。
研究開発は、大学や研究機関との連携も多いため、専門知識はもちろんプロジェクトを円滑に進められるコミュニケーション力も必要です。
日本の発展に関わる重要度の高い仕事ですが、求められるスキルも高度で人材不足に悩まされているのが現状です。将来のために、人材育成や研究環境の整備が急がれています。
セールス・企画
セールスは、半導体メーカーや代理店などを通じて、さまざまな企業に半導体を提案・販売する仕事です。顧客のニーズの聞き取りから製品提案、見積作成、アフターサポートなど一連の営業活動を担当します。
半導体業界のセールスには、技術的な知識とビジネス視点の両方が求められます。半導体はスマートフォンや自動車など幅広い分野で使われているため、各業界や商品を深く理解したうえで適切な半導体を提案する営業力が欠かせないからです。
企画職は、市場動向や顧客ニーズを分析し、新製品や販売戦略の立案、マーケティング施策の企画・実施などを行います。半導体業界は技術革新のスピードが速く、顧客ニーズも多様化しているため、最新技術やトレンドを把握したうえでの柔軟な提案力や企画力が求められます。
半導体業界の離職率
半導体業界の離職率は、他の産業と比べて特別高いわけではありません。
厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査」によると、製造業全体の入職率は9.6%、離職率は10.2%です。データでは就職する人に対し離職する人のほうが多いですが、これは製造業全体のデータのため半導体業界の離職率が高いとは言い切れません。
しかし製造業全体として離職率が入職率を上回っている現状には、危機感を覚えたほうが良いでしょう。半導体業界は今後のさらなる需要に対し、スキルを持った人材の確保が大きな課題です。
半導体人材を育成するポイント
半導体人材を育成するポイントを3つ紹介します。
- 基礎となる知識と技術の習得
- 変化に対応する思考力・人間力の醸成
- 学び続ける文化と仕組みの構築
半導体業界は技術革新のスピードが速く、求められる専門性も高いため、育成には戦略的なアプローチが重要です。
基礎となる知識と技術の習得
半導体人材の育成は、OJT(現場研修)だけに頼るのではなく、Off-JT(座学)による教育がポイントです。Off-JTでは、半導体デバイスの物理的な原理や製造プロセスの全体像、品質安全管理などの基礎知識を体系的に教えられます。
半導体製造における重要な工程を知識としてインプットすることで、現場での作業効率や安全性の向上、品質管理の徹底につながるのです。
またOJTとOff-JTを組み合わせると、半導体製造の全体像を理解できるため、現場での応用力や問題解決力を高められます。
変化に対応する思考力・人間力の醸成
半導体製造の現場は、何かしらのトラブルが発生しがちです。装置の異常やプロセスの不具合など、予測できない課題に直面する場合もあります。トラブルに対応するためには、専門知識や技術力だけでなく変化に柔軟に対応できる思考力や、周囲と連携して問題解決に努められる人間力が必要です。
他部署の担当者とも円滑にコミュニケーションを取り、情報を共有できれば、トラブル解決や生産効率の向上につながります。
またチームワークを育てるには、定期的なミーティングを開催して各部門間での情報共有が効果的です。日頃から情報共有を行っていれば、問題が発生した際も迅速に対応でき、生産ライン停止リスクを最小限に抑えられます。
学び続ける文化と仕組みの構築
半導体業界は技術進化のスピードが非常に速いため、常に学び続ける姿勢が大切です。そのため多くの企業では積極的に新しい知識を吸収できる仕組みを構築しています。
例えば業務に関連する資格取得の費用補助や報奨金制度を導入し、従業員が自発的にスキルアップできる環境を整えている企業があります。国内外の学会や展示会への参加を支援している企業であれば、補助を受けて出席が可能です。
明確なキャリアパスを提示し、従業員が成長イメージを描きやすいように工夫している企業も存在します。明確なキャリアパスの提示は、スキル、キャリアアップを目指すモチベーションになるでしょう。
他にはナレッジマネジメントの推進を行っている企業があります。
例えば開発や製造のノウハウ、トラブル対応の事例などを社内システムに蓄積し、全社的に共有・活用できる仕組みを構築しているなどです。ナレッジの蓄積は、新人教育だけでなく業務効率化や生産性向上にも役立っています。
まとめ
半導体業界の人材不足は、急速なデジタル化で需要が急増したのに対して、専門知識や技術を持つ人材の供給が追いついていないのが原因です。また厳しい労働環境や、他業界との人材争奪も影響しています。
人材不足の解決にはキャリア支援や職場環境の改善など、戦略的な人材育成が重要です。
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