Blog

ブログ

設備設計とは?仕事内容や役立つ資格・スキルまで解説

設備設計とはその名のとおり、建築物に設置する給排水や空調、電気などに関する設備を設計する仕事です。意匠設計や構造設計とともに建築設計の一翼を担う、やりがいのある仕事と言えるでしょう。本記事ではそんな設備設計の仕事内容や役立つ資格、必要なスキルについて紹介します。

目次

設備設計の業務内容や種類をチェックしよう


設備設計と一言で言っても、業務内容は多岐にわたります。また、設備設計のなかでも「給排水衛生」、「空調」、「電気」と設計する設備によってその種類が分かれるので、どういった内容の仕事を担当するのか把握しておきましょう。

業務内容と役割 

設備設計の業務内容は以下の7つに大別されます。

  • 企画設計

インフラの有無や位置の確認、設備計画の提案・決定、および大まかな費用の算出を行う

  • 基本設計

より詳細な設備設計をまとめ、諸官庁や審査機関と協議を行う

  • 実施設計

基本設計の内容をさらに具体化させて、設計図を完成させる

  • 工事監理

実施設計に沿って工事が行われているか管理する

  • 竣工時の対応

消防検査や設計検査など、各種検査に立ち会い、引き渡しを行う

  • 竣工後の対応

竣工後に発生した不具合やトラブルのアフターケアを行う

  • 改修・建て替え計画の設計

建物の老朽化具合に応じて、建物の一部を改修もしくは建て替え計画を立てる

上記の業務内で、デザインと機能を両立させ、かつコストの最適化を図りながら建築物のインフラ整備を行うことが、設備設計の役割になります。

建築設計は3種類に分類される 

設備設計は建築設計の1つに分類されます。建築設計は「意匠」、「構造」、「設備」で分業しており、それぞれに設計担当がいます。

  • 意匠設計:建築物のデザインを設計する
  • 構造設計:建築物の強度や安全性を検証する
  • 設備設計:給排水衛生設備設計・空調設備設計・電気設備設計を行う


設備設計の各設計における仕事内容は次のとおりです。

  • 給排水衛生設備設計:給水・給湯・排水・ガス・消火などに関わる設備を設計
  • 空調設備設計:空調・換気・排煙などに関わる設備を設計
  • 電気設備設計:照明・受変電・幹線・LAN・セキュリティなどに関わる設備を設計


設備設計における仕事の流れ


次に設備設計における仕事の流れを見てみましょう。

 1.顧客と打ち合わせを行う(ヒアリング)

建築主と打ち合わせを行い、どういった建物を建てたいのか、予算などをヒアリングします。

 2.企画設計を行う

企画設計では、ヒアリングで把握した内容に沿って大まかな建築プランを提案・決定します。具体的には次のようなことを実施します。

  • 建築主や建物を利用する人が希望する建物の環境を予算内で実現できるように企画を構想する
  • 給排水やガスなどのインフラの有無や位置も確認して、設備計画の提案する
  • 概要書や引き込みルート図を作成して、概算コストを算出する


この段階ではまだプランの詳細を詰めることはしません。概要を決めて、次の基本設計に進みます。

 3.基本設計を行う

基本設計では、次のような作業を行い、企画設計の内容を具体化して設計内容をまとめます。

  • 各設備の計算書の作成、機器用量の決定や必要な機械室のサイズなどを算出
  • 意匠設計、構造設計と整合を取る
  • 消防局や水道局、下水道局などの諸官庁協議を行う
  • 確認申請の審査機関と協議を行う
  • 基本設計図や基本計画書を作成する


この段階では建築プランの詳細を決めるとともに、諸官庁や審査機関との協議も行います。

 4.実施設計を行う

実施計画では、基本設計で決めた内容をさらに具体化させて設計図を完成させます。そのほか、次のようなことを行います。

  • 基本設計に基づき、具体的な設計図を完成させる
  • 建築主と設計内容の最終確認を行う
  • 設備ルート図や機器プロットを行う
  • 意匠設計や構造設計と調整を行う
  • 建築情報や設備ルート図などに基づき、設備の仕様を決める
  • 工事区分や特記事項なども含め、実施設計図を完成させる


この段階で、建築プランが決定します。なお、設備ルート図や機器プロットの調整ができなくなるので、実施設計の初期段階で調整を行っておく必要があります。

 5.見積書の作成と確認申請

実施設計図が決定したら、各種見積書の作成と各種法規に対して確認を取ります。

  • 設備機器のコストや配管・建材・資材のコストなどを見積書にまとめる
  • 確認申請を行って、検査機関から承認を得る(確認書類作成の助言を得る)
  • 建築主と契約を締結する


ここで作成した見積書は、工事の発注予算に反映されます。建築主と契約を締結したら、一連の設計業務は完了です。

 6.工事監理と竣工時の対応

設計業務が完了した後は、品質管理や進捗状況の報告などを行います。

  • 工事箇所の検査や施工状況の写真などを確認し、実施設計図に基づいて工事が行われているか、品質管理を行う
  • 施工者と打ち合わせを行い、工事の進捗や問題点の確認、指示書の作成などを行う
  • 建築主に工事の進捗や施工者との打ち合わせ内容を報告する
  • 確認申請の中間検査などの手続きと検査の立会いを行う
  • 設計内容の変更がある場合は変更図の作成や審査機関への提出を行う


工事が完了した後は、建築確認完了検査や消防検査に立ち会います。また、設計図との相違がないか確認するために設備検査も行い、引き渡しの前に建築主の検査にも立ち会います。設備検査と建築主の検査の際に不適切な箇所や気づいた点があれば、施工者に伝え、必要に応じて是正指示を実施します。

 7.竣工後の対応

引き渡しが終わったら、業務終了ではありません。竣工後に起きた不具合やトラブルの対応が待っています。

  • 竣工後に不具合が生じたら、施工者と原因追求・対応を行う
  • 改修工事の設計依頼がある場合は計画をまとめる


要はアフターケアを実施するということです。建物は完成した時点で完璧に機能することはほとんどありません。何かしらの不具合やトラブルが発生することが多いので、その際に設備のケアを担当するのも設備設計の仕事です。

 8.改修・建て替え計画の設計

年数が経つと建物の老朽化が進むので、改修や建て替えが必要になってきます。改修・建て替え計画の設計では、次のような作業があります。

  • 改修工事や建て替え計画を立てる(建築主と協議)
  • 既存建物や周辺インフラの調査
  • 設備の更新・省エネルギーや機能性の向上を目指す改修提案を行う


改修・建て替え計画の設計後は、2~7を繰り返します。


設備設計に役立つ資格


設備設計には下記の資格が役立ちます。

  • 建築設備士
  • 設備士資格検定
  • 技術士
  • 設備設計一級建築士


各資格の内容を見ていきましょう。

建築設備士 

建築設備士は、建築設備全般(給排水や電気、空調、換気など)に関する知識および技能を持ち、高度化・複雑化した建築設備の設計・工事監理に関して、建築士に適切なアドバイスを行える有資格者です。

試験は一次の学科試験と、二次の設計製図で構成されています。主催団体の公益財団法人 建築技術教育普及センターによると、平成30年から令和4年までの5年間における合格率は13.5~19.4%となっており、取得難易度の高い資格であることが分かります。

受験するためには指定の課程を修了した学歴と実務経験が必要です。実務経験の年数は学歴によって異なり、大学の場合は2年以上、短期大学・高等専門学校・旧専門学校の場合は4年以上、高等学校・旧中等学校の場合は6年以上となっています。

建築設備士の資格を取得すると、一級建築士、二級建築士、木造建築士において実務経験なしで受験資格を付与されます。また、建設業・建築設計事務所などの就職に有利となる資格です。


受験資格

大学、短期大学、高等学校、専修学校などの正規の建築、機械または電気に関する課程を修了して卒業した者

一級建築士等の資格取得者

建築設備に関する実務経験を有する者

※1~3それぞれに応じて建築設備に関する実務経験年数が必要

試験科目

●    第一次試験(学科):建築一般知識、建築法規及び建築設備

●    第二次試験(設計製図):建築設備基本計画及び建築設備基本設計製図

難易度

受験料

36,300円

※このほか、ネット受付事務手数料が必要

試験地

札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪府、広島市、福岡市、沖縄県

※沖縄県では、「第一次試験(学科)」のみ実施。第二次試験は福岡市で受験

主催団体

公益財団法人 建築技術教育普及センター



設備士資格検定 

設備士資格検定とは、建築設備における空調や給排水衛生設備に関わる者に対して、基礎から専門的な技術・知識における修得度を判定する試験です。試験内容は空調部門と衛生部門に分かれており、合格すると空気調和・衛生工学会設備士の称号が得られます。取得しておけば建築業界への就職に有利になる資格です。

合格率は例年40%前後で推移しており、難易度は低いため、比較的取得しやすい資格と言えるでしょう。

受験資格

誰でも可

※最終学歴に応じて実務経験年数が必要

試験科目

●    空調部門

●    衛生部門

難易度

受験料

1部門 9,900 円

試験地

東京都、大阪市、名古屋市、札幌市、仙台市、金沢市、広島市、福岡市、那覇市

主催団体

公益社団法人 空気調和・衛生工学会



技術士 

技術士とは、高度な技術知識と高い技術者倫理を認められた技術者であり、文部科学省所管の国家資格です。合格すると技術士を名乗れます。

試験は大学のエンジニアリング課程修了程度の一次試験と、専門的知識と応用力が問われる二次試験で構成されてており、文部科学省令で定める21の技術部門ごと実施されます。一次試験は合格率が高い傾向にありますが、二次試験は低いため、総合的にみると難易度は高いと考えられるでしょう。

受験資格

●    一次試験:制限なし

●   二次試験:技術士補となる資格を有し、所定の要件に該当する者

試験科目

●    一次試験(大学のエンジニアリング課程(工学、農学、理学等)修了程度)

●   二次試験(技術部門についての専門的学識及び高等の専門的応用能力)

難易度

受験料

●    一次試験:11,000 円

●   二次試験:14,000円

試験地

北海道、宮城県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県

主催団体

公益社団法人 日本技術士会 技術士試験センター



設備設計一級建築士 

設備設計一級建築士は、設備設計に関する専門的な知識や経験を証明する試験です。一級建築士の上位資格に当たるため、難易度は非常に高い資格です。設備設計一級建築士を取得するためには、まず一級建築士として設計業務に5年以上従事する必要があります。そのうえで、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関の講習課程を修了することで、資格を取得できます。

この資格を保有していると、設備設計事務所やゼネコンなどの就職・転職に有利になります。

受験資格

一級建築士として5年以上、設備設計に従事した経験を持つ者

試験科目

国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習

難易度

非常に高い

受験料

44,000~66,000円

試験地

札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪府、広島市、福岡市

主催団体

公益財団法人 建築技術教育普及センター



設備設計に欠かせない3つのスキル 


設備設計が設計するのは、設備はもちろん、設備を設置する環境そのものも含まれます。そのため、設備に関する知識をはじめ、建築物に関する知識、各設計との調整能力、使用シーンを想定した設備の最適化を図る能力が求められます。

設備や設備設計に関する知識

設備設計は建築物のインフラを設計するのが仕事であるため、配管や上下水道、空調などの建築設備全般の知識が必要です。年々、新しい設備が登場しているので、自身の知識・技術の更新するための勉強も欠かせません。また、設計方法によってどのくらいのコストがかかるかを見積もるための知識も求められます。

建築物の設備に関する調整能力

1つの設備を設置するのにも意匠設計、構造設計、設備設計のそれぞれの見解は異なります。たとえば排煙ダクトを設置するとなると、意匠設計の立場では建物の端の方に設置するのが望ましいのですが、設備設計の立場からだと建物の中央に設置するのが最適な設置場所になります。一方、構造設計の立場からすると排煙ダクトの位置によっては柱や梁の追加・補強を提案しなくてはいけません。

いずれかの主張を尊重してしまうと、バランスが崩れ、不具合やトラブルの元となります。このように、設備設計には建物全体でバランス良く機能させるための最適解を探すための調整能力が求められます。


環境に適した設備の想定能力

建物は何かしらの用途のために使用されることを前提に建てられます。そのため、ただ建てれば良いわけではありません。たとえば、建物の温熱環境や照明の効果によって、どの程度の室温になるか予想できますが、使い方によっては温度差が激しくなることにより結露が発生することもあります。

こうした使われ方によるトラブルを想定できずに建物が完成してしまった場合、改善コストが膨れ上がります。できる限りのトラブルを想定し、室内環境を最適化できるかどうかが設備設計の腕の見せどころとも言えるでしょう。


まとめ


建物の設備は年々進歩しており、時代のトレンドに合わせて利用者が快適に過ごせるように最適な設備を設計するのが、設備設計の仕事です。そのため、建物の快適性を決めるのが、設備設計の仕事と言っても過言ではありません。

住宅をはじめ、さまざまな施設の需要は継続的に発生します。そのため、設備設計は今後も需要のある仕事であり、将来性の高い仕事と言えるでしょう。


設備設計の求人情報はこちら

Contact

各種お問い合わせ

Recruit

採用情報