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研究デザインとは?6種類の詳細分類や4つの要素などわかりやすく解説

研究デザインは、研究をする上でとても大切な要素です。研究結果や信頼性の高いデータを効率的に得るためには、研究デザインを適切に行う必要があります。ただし、研究デザインといってもさまざまな種類があるので、それぞれの特徴をしっかりと把握しておかなければなりません。


そこで、本記事では、研究デザインの種類や研究デザインにおける重要な4つの要素を詳しく説明します。


目次

研究デザインとは研究の「型」のこと



簡単に説明すると、研究デザインとは研究の「型」です。
 
基本的に、研究はある仮説を立てて、その仮説を実証するために介入や調査などを進めていきます。そして、客観的な事実や研究結果などのデータを集めながら考察していくというプロセスです。
 
研究というプロセスの中で、介入方法にするのか、測定方法や評価はどうするのか、研究対象を何にするのか、どのくらいの期間で研究を行うのかなど研究計画の要になることをしっかりと定める必要があります。
 
以上のように、どのような方法で研究を進めるのか、その型を決めるのが「研究デザイン」というわけです。研究デザインがいい加減なものになってしまうと、研究途中で不具合やミスが生じたり、正しい研究結果が得られなくなったりしてしまいます。
 
また、研究デザインはさまざまな種類があるので、研究や評価内容に応じて決めるのが大切なポイントです。研究デザインにどのような種類があるのか、それぞれの特徴をしっかりと把握しておく必要があります。


研究デザインの種類は6つ!詳細分類も解説



研究デザインの主な種類は、以下の6つです。

  • 介入研究
  • 観察研究
  • 臨床疫学研究
  • シングルケーススタディ
  • 症例研究・症例報告
  • 質的研究

なお、各研究デザインによって、さらに細かく分類することもできます。それぞれの細かな分類についても詳しく説明するので、ぜひチェックしてください。
 

介入研究

介入研究は研究対象者に介入を行い、投薬や治療などの介入結果を比較することで効果を検証します。介入研究の大きな特徴は、研究者自身が積極的に介入を行うことです。
 
たとえば、高血圧の人に対して新しい降圧剤を投与し血圧に改善がみられるかどうか、確かめるケースが当てはまります。介入研究を実施する際は、対象者に対して事前に説明し同意を得る“インフォームドコンセント”が必要です。
 
また、研究者自身が積極的に介入できるため、研究者が観察する研究よりも信頼性の高いデータを得ることができます。しかし、労力と時間がかかるという点が介入研究のデメリットです。
 
なお、介入研究は対象者の割り付け型によって、ランダム化比較試験・準ランダム化比較試験・クロスオーバー比較試験の3つに分類できます。
 

ランダム化比較試験

ランダム化比較試験は、研究対象を「対称群」と「介入を加える群」の2つに対してランダムに割り当て、介入による結果を検証する方法です。性別・年齢・疾患歴といった要因の偏りを少なくするために、試験対象をランダムに割り当てます。そのため、ランダム化比較試験によって得られる結果は、他の研究デザインよりも信頼性の高いデータです。
 

準ランダム化比較試験

準ランダム化比較試験は、ランダム化比較試験に準じた割り当てて行う試験のことです。非ランダム化試験や比較臨床試験とも呼ばれており、カルテ番号・コイン投げ・誕生日などを用いて行われます。論理的な問題が起こりにくいというメリットはありますが、必ずしも科学的根拠を得られるとは限りません。
 

クロスオーバー比較試験

クロスオーバー比較試験は、研究対象を介入群と対象群の2つに分けて介入を行った後、介入を停止し、介入の有無を入れ替えてもう一度経過を見る研究方法です。試験期間が他の方法よりも倍以上かかりますが、少ない被験者の数で行えるというメリットがあります。
 
※参考:介入研究|一般社団法人 日本疫学会
 

観察研究

観察研究は治療行為といった介入を行わずに、観察によってデータの収集や解析を行うことです。
 
たとえば、患者から尿・血液のサンプルや検査結果といった診療記録のデータを提供してもらったり、定期的にアンケートを実施したりするなど、調査対象者の経緯や経過をそのまま観察し、分析します。
 
そのため、自然な状態でデータが収集でき、しっかりと分析することでリアルでより適切なアプローチができるというわけです。観察研究は、研究者の偏りや偏見を軽減できますが、研究グループの分類がコントロールしにくくなり、研究グループを無造作に分けることができないというデメリットもあります。
 
また、データの収集方法によって、横断研究・症例対照研究・コホート研究の3つに分類されるので、それぞれの特徴も併せてチェックしておきましょう。
 

横断研究

横断研究は、その場で起きていることを断面的に調査する方法です。過去や将来にわたって調査することがないので時間や経費が削減できるというメリットがあります。ただし、研究者による先入観や偏見の影響が入りやすい傾向があるので注意が必要です。
 

症例対照研究

症例対照研究は、過去に起きたことを遡って調査する方法です。疾患の特徴や要因、背景因子の違いなどを過去に遡り、関連性を確認します。症例数を調整しながらの割り付けが可能なので、症例数の少ない対象を研究する際に有利です。
 

コホート研究

コホート研究は、これから起きることを調査する方法です。基本的に、将来にわたって疾患の改善や悪化の有無などを観察し、その要因や特性を明らかにする方法なので、介入せずに観察のみで行われます。研究対象の割り付け時における先入観や偏見は避けられますが、時間や費用がかかるという点がデメリットです。
 

臨床疫学研究

臨床疫学研究は、多くの患者から診断や治療に関するデータを収集し、統計学的手法を用いて解析します。そして、医療の安全性や有効性を科学的に評価する研究方法です。臨床検査所見や治療効果、疾病以上の原因とリスク、予後など臨床医学の現場ではさまざまな疑問が発生します。それらの疑問を明らかにする研究が、臨床疫学研究というわけです。
 
臨床疫学研究の大きなメリットは直接人を対象にできる点ですが、症例が少ないので統計的な精度が低くなってしまうというデメリットがあります。
 
なお、臨床疫学研究をさらに細かく分けると、システマティックレビューとメタアナリスの2つがあります。
 

システマティックレビュー

システマティックレビューは、研究論文を系統的に検索・収集し、一定の基準で類似した研究を選択・評価します。その上で、科学的な手法を用いてまとめる研究方法です。臨床的疑問に対する推奨を作成する際に用いられることが多く、偏りがないように収集した科学的根拠を慎重に吟味する必要があります。
 

メタアナリシス

メタアナリシスは、類似している研究結果を統合し、特定の疾患とある要因が関係しているかを解析・分析する手法です。単一の研究では有意差があるとは言えないケースでも、複数を束ねることで統計的に優位であることが証明できます。
 

シングルケーススタディ

シングルケーススタディは、1つの事例または複数例の症例から介入と結果を分析します。たとえば、1つの事例に対して新しい治療法の効果検証を行ったり、治療を行っていない時期と治療を行った時期を比較して検証したりするなどです。
 
少数事例でも実施できる研究方法ですが、時間的経過による違いや偶然といった偏りが除去しにくいというデメリットがあります。
 
また、実験デザインによって、ベースライン期と介入期に分けるABデザイン、ABデザインの欠点を補うABAデザインの2つに分類されるのも大きな特徴です。
 

症例研究・症例報告

症例研究・症例報告は、臨床的疑問を理論的に検証するため、新たな治療を実践したり、解釈の仮説検証を行ったりする研究方法です。主に、1つの事例に対して研究を行い、症例の経過をまとめることになります。
 
しっかりと症例報告をまとめることで思考力が身につき、自分へのフィードバックもできるという点が大きなメリットです。ただし、科学的根拠が低いというデメリットがあります。
 

質的研究

質的研究は、個別事例を観察し分析する研究方法で、主に臨床心理学・社会学・看護学で用いられることが多いです。質的研究においては、研究結果よりも経過や要因を重視することが大切な要素となります。
 
また、質的研究の目的は、数字では見えない質的なデータを収集し分析することです。そのため、収集するデータの多くはインタビュー記録や観察記録となります。


研究デザインにおける重要な4つの要素とは



研究デザインにおいて、必ず押さえておきたい重要な要素は以下の4点です。

  • 中立性
  • 信頼性
  • 妥当性
  • 一般化

それぞれ具体的にどういうことなのか、詳しく説明していきましょう。
 

中立性

研究デザインで大切なのは、研究結果に先入観といったバイアスがかからないことです。研究手法にバイアスがかかってしまうと、研究結果に大きな偏りが生まれてしまいます。そのため、研究デザインにおいては中立性をいかに保てるかどうかが大切なポイントです。中立的な立場でいるためにも、先入観や偏見をなくす必要があります。
 

信頼性

研究デザインで得られる結果は、科学的根拠が高く、信頼性のあるデータが好ましいとされています。特に、定期的に行われる研究の場合、毎回同じ結果でないと信頼性は得られません。信頼性の高い研究デザインであればあるほど、研究者にとっては望ましい結果へと到達できます。
 

妥当性

研究目的の事情をしっかりと捉えているか、見たいものがきちんと見えているかどうかを示す妥当性も研究デザインにおける重要な要素です。研究デザインにバイアスがかかってしまうと、中立性だけでなく、妥当性も失われてしまう恐れがあります。妥当性のない研究デザインで得られた結果は保証できません。
 

一般化

研究デザインにおける一般化も重要なポイントです。一般化とは、研究で得られた結果がサンプルケースだけにたまたま当てはまるのではなく、その結果がどこまで当てはまるかという可能性を示しています。特に臨床研究においては、研究で得られた結果を一般化させることが目標であり、大切なことです。


最適な研究デザインの選び方



では、研究デザインはどのように選べばいいのでしょうか。選び方はさまざまですが、研究の性質と目的で研究デザインを選ぶのが大きなポイントです。どのくらいの質を研究結果で求めるのか、何の目的で研究を行うのかを事前に明らかにしておく必要があります。
 
また、リサーチクエスチョンを踏まえて選ぶのも大切なポイントです。研究を通してどのような答えを探すのか、方向性に合った研究デザインを選びましょう。
 
研究の性質・目的・リサーチクエスチョンを固めた上で、関連する研究と効果的に用いられた研究デザインをチェックしてみてください。その際、複数の研究デザインが候補に挙がる場合も考えられるので、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて比較することも重要です。


まとめ



研究を行う上で非常に重要な要素となる研究デザインには、さまざまな種類があります。研究デザインを選ぶ際は、研究の性質や目的・リサーチクエスチョンをしっかりと固めた上で、それぞれのメリットやデメリットを踏まえながら選ぶことが大切です。
 
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